SNSコラム

保険診療クリニックにSNS運用は本当に必要?費用対効果の考え方

By 2026年7月14日No Comments

こんにちは、クリニックWeb総合研究所代表の濱谷です。
今回のテーマは保険診療のクリニックにおけるSNS運用の必要性についてです。

まず初めによくある質問として、「うちもSNSを始めた方がいいですか?」といった質問を保険診療クリニックの院長先生からよくいただきます。

結論から言えば、予算や運用体制が確保できるのであれば、やった方がよい施策です。
ただし、ここで重要なのは「SNS運用によって期待される効果を正しく理解すること」です。

保険診療のクリニックのSNSは、自費・美容クリニックのように新患を直接獲得するツールではありません。

では、何のためにやるのか。
それは、検索やGoogleマップでクリニックを見つけた患者の「ここに行ってみよう」という気持ちの背中を押す役割です。
患者はGoogle検索やマップでクリニックを見つけた後、HPや口コミ、そしてSNSで院内の雰囲気や院長の人柄を確認して来院を決めています。SNSはこの「最後のひと押し」の場面で機能するメディアです。

わかりやすく言えば、自費・美容クリニックの場合は来院数を50人→70人と増やすことが役割として機能しますが、保険診療クリニックの場合は、来院率を30%→40%に増やす形で機能することが狙えます。(この辺りはまた詳しく後述しますが、ここでは簡単にそれぞれにとってのSNSの役割がそういうものだと理解していただければ十分です)

一方で、SNS運用を始めたものの、中途半端に始めて投稿が止まってしまうと、「活動していないクリニック」という逆の印象を与えるリスクがあります。つまり、「やるなら継続する、続けられないなら始めない」という判断が求められます。

本記事を通して、保険診療クリニックにおけるSNSの本当の役割と費用対効果について整理し、自院は今SNSをやるべきかどうかの判断材料にしていただければと思います。

保険診療クリニックのSNSは「集患ツール」ではなく「信頼構築メディア」

患者がクリニックを選ぶ導線の中でSNSが果たす本当の役割

保険診療の患者がクリニックを選ぶプロセスは、人によって順番の前後や一部プロセスの省略はあるものの、おおむね以下の流れをたどります。

症状の発生
→ Google検索 or マップ検索
→ HP確認
→ 口コミ確認
→ SNSで雰囲気確認
→ 来院決定

この流れの中で、SNSが果たしているのは「クリニックを見つける」段階ではなく、「見つけた後に雰囲気を確認する」段階の役割です。
検索やマップで候補を2〜3件に絞った患者が、最終的にどのクリニックを選ぶかを判断する際に、Instagram等で院内の様子を覗くという行動が増えています。

そこで、清潔感のある院内写真、院長の穏やかな診療姿勢、スタッフの笑顔、季節の健康情報の発信など、こうしたコンテンツを通じて「このクリニックなら安心して行けそう」という印象が形成されると、来院の決定を後押しする効果があります。

SNSは「発見のメディア」ではなく「安心の後押しメディア」:
保険診療のクリニックにおいては、SNSは「新しい患者に見つけてもらう」ためのツールではありません。
Google検索やGoogleマップで見つけた患者が、来院前に「このクリニックの雰囲気はどうだろう?」と確認するためのメディアです。つまりSNSは「発見のメディア」ではなく「安心の後押しメディア」、この理解がSNS運用の出発点になります。

たとえば、内科クリニックのInstagramに「待合室の様子」「院長が健康情報を解説するリール動画」「スタッフ紹介」が定期的に投稿されていれば、「活気のあるクリニック」「丁寧そうな先生」という印象が伝わります。
こうした印象は、HPだけでは伝えきれない「生きた情報」であり、患者が最終的に来院を決める際の安心材料として機能します。

特に初診の心理的ハードルが高い診療科、例えば心療内科、小児科(初めて子どもを連れていく親)、婦人科などでは、この「安心感の後押し効果」は無視できない大きさです。

自費・美容系クリニックとの違い:なぜ保険診療ではSNSで直接集患が難しいのか

ここまで「保険診療クリニックのSNSは直接集患のチャネルではなく、信頼構築装置として機能する」とお伝えしてきました。
その一方で、自費・美容系クリニックではSNSを通じた直接的な集患が成立しやすく、実際にInstagramの投稿をきっかけに予約が入るケースが珍しくありません。

この違いはSNSの運用テクニックの差ではなく、保険診療と自費診療における「患者さんの行動パターン」と「経済構造」の違いから生まれています。
この違いを理解しておくことが、SNSに過度な期待をかけず、適切な役割を設定するための前提になります。

違いを生み出している要因は大きく以下の2つがあります。

 

① 金額の違いが「探し方の真剣度」を変える点

② 「成果のばらつき」が情報収集の深さを変える点

 

① 金額の違いが「探し方の真剣度」を変える点

まず1つ目ですが、保険診療は保険が適用されるため、患者さんが窓口で支払う金額は比較的少額です。
初診で数千円、継続通院でも1回あたり数百円〜数千円程度の自己負担が一般的です。一方、自費診療(美容整形、歯列矯正、インプラント等)は数十万円〜数百万円の費用がかかるケースもあります。

人の購買行動には「金額が大きいほどリサーチに時間をかけ、金額が小さいほど手近な選択肢で済ませる」という傾向があります。たとえば2,000円の買い物であれば近くのお店でさっと決めますが、100万円の買い物であれば複数の選択肢を比較し、口コミを読み、時間をかけて検討します。

この心理がクリニック選びにも当てはまります。
自費診療の患者さんは金額が大きいため、エリアを広げて情報収集を行い、SNSの投稿や症例写真を丹念に比較し、遠方のクリニックであっても「ここが良い」と思えば足を運びます。
一方、保険診療の患者さんは自己負担額が少額のため、通いやすい近隣のクリニックの中から選ぶという行動パターンになりやすく、わざわざ遠方のクリニックをSNSで探すという行動が起きにくいのです。

② 「成果のばらつき」が情報収集の深さを変える点

もうひとつの違いは、クリニックごとに「成果(結果)にどれだけ差が出るか」です。

自費診療の場合、たとえば二重整形や歯列矯正では、仕上がりがクリニック(術者)によって大きく異なります。自分にとって満足できない結果になった場合、その後の生活への影響も大きいため、患者さんは「どのクリニックの先生に任せるか」を慎重に選びます。
症例写真の比較、カウンセリングでの印象、SNSでの発信内容、すべてが判断材料になるため、SNSが直接的な来院動機になり得ます。

一方、保険診療の場合は状況が異なります。
たとえば「高熱が出たので治したい」という患者さんにとっての成果は「熱が下がること」であり、この結果はクリニック間でそれほど大きな差が生じにくい傾向にあります。
もちろん説明の丁寧さやスタッフの対応には差がありますが、治療の結果そのものに関しては「どのクリニックでもおおむね同じ結果が得られる」と患者さんが認識していることが多いです。
そのため、SNSで遠方のクリニックまで探し出す動機が生まれにくく、「近くて通いやすいクリニック」が選ばれる傾向が強くなります。

この2つの違いが「検索範囲の広さ」を決める

以上の2つの要因(金額の違い+成果のばらつきの違い)が組み合わさることで、自費診療と保険診療では「患者さんがクリニックを探す範囲」に大きな差が生まれます。

比較項目保険診療自費・美容系
自己負担額少額(数千円)高額(数万円〜数百万円)
クリニック間の成果の差比較的小さい大きい(術者による差が顕著)
リサーチの深さ浅め(近場から選ぶ)深い(広範囲から比較検討する)
クリニックを探す範囲近隣エリア(徒歩・車で通える範囲)広域(他県・遠方も対象)
SNSの役割検索・マップで見つけた後の「信頼確認」直接的な集患チャネル(投稿→来院)

つまり、保険診療のクリニックがInstagramをどれだけ充実させても、九州の患者さんを東京のクリニックに呼ぶことは現実的ではありません。
自費診療の美容クリニックであれば、SNSで症例を見た患者さんが他県から来院するケースは実際にありますが、保険診療ではその行動パターンが起きにくい構造になっています。

だからこそ保険診療クリニックのSNSは、広く遠くのフォロワーを集めることではなく、「Google検索やGoogleマップで自院を見つけた近隣の患者さんが、Instagramを見て安心感を得て来院を決める」という信頼構築の役割に集中する形が効果的です。

この違いを理解しないまま美容系の成功パターンを保険診療に持ち込むと、「投稿を頑張っているのに新患が増えない」という期待と実態のギャップに苦しむことになります。
保険診療のクリニックがSNSに取り組む際は、最初から「直接的な新患獲得ではなく、信頼構築の後押し」という正しい期待値で臨むことが、長く続けるための前提です。

Instagramがあるクリニックとないクリニック、患者はどちらを選ぶか

では、SNSの有無は患者の選択にどの程度影響するのでしょうか。

検索やGoogleマップで候補を2〜3件に絞った段階の患者が、最終判断の材料としてInstagramを確認するケースが増えています。
この段階で、片方のクリニックのInstagramは清潔感のある院内写真と定期的な健康情報の投稿がある。もう片方はSNSアカウントがない、あるいは最後の投稿が1年前というようなケースで、この2つを比較した場合、前者に安心感を抱く患者が多いのは自然な心理です。

ただしこの効果は、HP・MEO(Googleマップ対策)が整備されていて初めて機能するものです。
HPが未整備のクリニックのInstagramをどれだけ充実させても、肝心の「予約導線」がなければ来院にはつながりにくいです。
SNSは単体で機能するものではなく、HP・MEO・口コミという土台の上に乗せることで初めて効果を発揮する「最後の仕上げ」の施策です。

LINEとInstagram:保険診療クリニックに推奨するSNSの使い分け

LINE公式アカウント:既存患者のリテンションと実務効率化

LINE公式アカウントは、他のSNSとは根本的に性質が異なるプラットフォームです。
Instagram・X・YouTubeが「まだ来院していない人」への発信が主な目的であるのに対し、LINE公式は「すでに来院した患者」との関係維持が主な目的です。

保険診療のクリニックにおけるLINE公式の主な活用方法は以下の通りです。

  • 再診リマインド:慢性疾患患者への定期検査の案内。通院の間隔が空くのを防止し、かかりつけ化を促進
  • 健診・予防接種の案内:特定健診、インフルエンザ予防接種、がん検診などの季節ごとの案内配信。従来のハガキ郵送を代替しコスト削減にもつながる
  • 臨時休診・診療時間変更の通知:リアルタイムの情報発信で電話問い合わせの削減に寄与
  • リッチメニューによるCV導線:トーク画面下部にWeb予約・問診・アクセス情報を配置し、LINE画面から予約完了まで導く

費用面でも、LINE公式は保険診療クリニックとの相性が良いプラットフォームです。
無料プランでも月200通までの配信が可能であり、有料プランでも月額5,000〜15,000円程度と低コストです。
従来のハガキ郵送(1通あたり印刷費+送料で100〜200円、100人に送ると1〜2万円)と比較しても、コストと到達率の両面でLINEの方が優れています。

開封率がメールよりも高い傾向にある点も大きな強みです。
健診案内のハガキやメールは「そもそも読まれない(開かれない)」リスクがありますが、LINEはプッシュ通知で気づいてもらいやすいため、その分情報の到達率も高くなりやすいです。

こうした特性から、LINE公式アカウントは「SNS」というカテゴリで語るよりも、「患者コミュニケーション基盤」として独立して導入判断すべきツールになります。
保険診療のクリニックであれば、診療科を問わずほぼすべてのクリニックで導入効果が見込めるのもポイントです。

Instagram:院内の雰囲気と信頼感を伝えるショーケース

Instagramは、保険診療クリニックにおいては前述した通り、それ自体が直接的な新患の獲得として機能するというよりも、「検索やマップでクリニックを見つけた患者が、最終確認で見に来るショーケース」として機能します。

保険診療ではビフォーアフター写真が基本的には使えない(使いにくい)ため、コンテンツの軸は「知識提供型」と「親しみ型」がおすすめです。

コンテンツの種類具体例患者に与える印象
院内の雰囲気外観・受付・待合室・診察室の写真、リニューアル報告「清潔で居心地のよさそうなクリニック」
季節の健康情報花粉症対策、熱中症予防、インフルエンザ予防のカルーセル投稿「患者の健康を真剣に考えてくれるクリニック」
院長の解説動画「健診でコレステロールが高いと言われたら」等のリール動画「話しやすそうな先生、専門知識もある」
スタッフ紹介看護師の紹介、受付スタッフの日常「スタッフも感じがよさそう。安心して行ける」
設備紹介新しい検査機器の導入報告、バリアフリー対応の紹介「設備が整っている。きちんとしたクリニック」

これらのコンテンツは、HPに掲載されている情報と重なる部分もありますが、Instagramの強みは「生きた情報」「リアルタイム性」「視覚的な親しみやすさ」にあります。
HPの写真は制作時に撮影された固定的なものですが、Instagramは日常の1コマを切り取って発信できるため、「今のクリニックの雰囲気」がリアルに伝わります。

またInstagramの場合はハッシュタグ機能を効果的に使うことが重要です。
ハッシュタグは「地域名+診療科」の組み合わせを基本にすることで、商圏内の見込み患者に投稿が届きやすくなります。「#◯◯駅内科」「#◯◯市クリニック」「#◯◯区小児科」のような形です。

X・YouTube・TikTok:保険診療クリニックでの優先度は低め

LINE公式+Instagramの二本立て(もしくはInstagramのみ)が安定運用できている場合に、追加で検討する選択肢を整理します。

プラットフォーム保険診療での主な活用法メリット課題推奨度
X(旧Twitter)臨時休診・診療時間変更の告知。HPお知らせ欄の代替テキスト中心で運用負荷が低い。即時性に優れる集患への直接的な貢献は限定的△(お知らせ配信に特化するなら有効)
YouTube院長による疾患解説動画。HPへの埋め込み。Instagramリールへの転用資産性が高い。検索エンジンとしても機能する制作負荷が高い。継続が難しい○(余力があれば月1〜2本から)
TikTok若年層へのリーチ。健康情報のショート動画若年層へのリーチ力は高い保険診療クリニックでの成功事例がまだ限定的△(現時点では優先度低い)

重複しますが、まずはLINE公式+Instagramの二本立て(もしくはInstagramのみ)で運用基盤を安定させることが先決です。
3つ以上のSNSを同時に運用すると、担当者の負荷が急増し、どのプラットフォームも中途半端になるリスクがあります。

放置アカウントは逆効果:「やるなら続ける」が鉄則

SNS運用で最も避けるべき状態は、「アカウントを作ったものの更新が止まっている」状態です。

検索やGoogleマップでクリニックを見つけた患者がInstagramを覗いたとき、最後の投稿が1年前で途絶えていた場合、「このクリニックは今も診療しているのだろうか?」「やる気がないのかな?」といったように、信頼感の後押しどころか、来院の意欲を削ぐ逆効果につながりかねないリスクがあります。
特にInstagramは、プロフィールページを訪問すると投稿の一覧(フィード)が一目で見えるため、最終投稿日が古いことがすぐに分かります。

放置アカウントは「ないよりマシ」ではなく「ない方がマシ」:
更新が数ヶ月以上止まったSNSアカウントは、患者に「活動していないクリニック」という印象を与え、信頼構築の後押しどころか逆にマイナスの影響を及ぼします。SNSのアルゴリズム上も、更新頻度の低いアカウントは新規ユーザーに表示されにくくなります。放置アカウントは「あるだけで損をしている可能性がある」状態と言えます。

継続運用のための現実的な体制設計

放置を防ぐためには、「気合いで頑張る」のではなく、仕組みで継続できる体制を作ることが重要です。

  • 無理のない頻度で始める:Instagramのフィード投稿は週1回でも十分。月4本からスタートし、余裕が出てきたら週2回に増やす段階的なアプローチが現実的
  • 投稿テンプレートを用意する:「院内紹介」「健康豆知識」「スタッフ紹介」「お知らせ」の4パターン程度のテンプレート(画像のレイアウト+テキストの雛形)を用意しておくと、毎回ゼロから企画する負担が大幅に軽減される
  • 月間投稿カレンダーを月初に作成する:「第1週は院内紹介、第2週は健康豆知識、第3週はスタッフ紹介、第4週はお知らせ」のように枠を決めておくと、ネタ切れによる更新停止を防げる
  • 複数人が関われる体制にする:担当者1人に依存すると、その人が休んだり退職したりした時点で運用が止まる。院長直轄の広報活動として位置づけ、撮影係・テキスト作成係・承認者を分担する体制が望ましい
  • 外注の活用:予算をかけられる場合は、外注も積極的に活用したいところです。外注を活用することでデザイン性に優れるのはもちろん、SNS運用にかける労力をカットすることができます。

始める前に考えるべきこと:続けられないなら始めない勇気

SNSの開始を検討する際には、以下の問いに正直に答えてみることが大切です。

  • 「半年後も週1回の投稿を続けられるか?」
  • 「担当者が退職しても運用が止まらない体制があるか?」
  • 「投稿のために週2〜3時間のスタッフ工数を確保できるか?」

これらの問いに「難しい」と感じるなら、現時点ではSNSを始めずに、HP・MEO・口コミ対策に集中する方が費用対効果は高いと言えます。
SNSをやらないこと自体は問題ではありませんが、始めて放置することは問題になります。将来的に体制が整った段階で改めてSNSを開始するという判断も、合理的な経営判断です。

SNS運用にかかる費用と費用対効果の正しい評価方法

SNS運用にかかる費用の全体像

SNS運用の費用は、運用形態によって大きく異なります。「SNSは無料で始められる」というのはアカウント開設に限った話であり、継続的な運用には確実にコストが発生します。

運用形態金銭コスト人的コスト年間トータルコスト(概算)
完全内製
(Instagram週1投稿+LINE公式有料プラン)
LINE有料プラン:月5,000〜15,000円程度スタッフ工数:月6〜8時間(時給1,500円換算で月9,000〜12,000円)約17〜32万円
ハイブリッド型
(企画・デザインは外注、撮影・院長コメントは内製)
外注費:月7〜12万円程度+LINE有料プラン院内の撮影・コメント提供:月3〜4時間約80〜150万円
完全外注
(SNS運用代行会社に一括委託)
月額10〜30万円院長の月1回の方向性確認:月1時間程度約120〜360万円

内製の場合、金銭コストはLINE公式の有料プラン程度ですが、スタッフの工数という「見えないコスト」が発生します。
1投稿あたりの所要時間の目安は、企画(30分)+撮影(15分)+制作(30分)+院長承認(10分)で約1〜1.5時間です。週1回投稿で月間約6〜8時間、年間では約80〜100時間になります。
この時間は本来、受付業務や看護業務に充てられるべきものであり、「無料」とは言えない実質的なコストです。

費用対効果(コストパフォーマンス)の正しい測り方

保険診療クリニックのSNSは、リスティング広告のようにCPA(新患1人あたり獲得コスト)で効果を測ると「効果がない」ように見えてしまう構造があります。
なぜなら、最初に述べたように、保険診療におけるSNSの効果は、「SNSを見て直接予約した患者の数」ではなく、「検索やマップで見つけた患者が、SNSの印象を経て来院を決めた」という間接的な貢献だからです。

⚪︎SNSの効果はCPAではなく「間接的な信頼感の醸成による貢献」で評価する

保険診療クリニックのSNSの効果は、「SNSがなかった場合に来院しなかったかもしれない患者の背中を押した」という間接的な貢献です。この効果は直接的な数値化が難しいですが、患者の安心感・信頼感には影響しています。SNSの投資判断は、CPAではなく「間接的な信頼感の醸成による貢献」で評価するのが適切です。

この間接的な効果を可視化するためには、以下の指標を組み合わせて評価するのが実務的なアプローチです。

評価指標計測方法見るべきポイント
プロフィール閲覧数Instagramのインサイトプロフィールを見に来た人数の推移。HPリンクへの遷移数も合わせて確認
HPリンクのクリック数Instagramインサイト or UTMパラメータSNS→HP→予約の導線が機能しているかの指標
電話タップ数(Instagramプロフィール経由)InstagramのインサイトSNSから直接の問い合わせ行動を示す指標
フォロワー数の推移Instagramのインサイト急増よりも緩やかな増加が健全。商圏内のフォロワーの割合も意識
エンゲージメント率(いいね+コメント+保存)÷リーチ数投稿の質を示す指標。3〜5%程度が一般的な目安
来院時の問診票「Instagramを見ましたか?」の項目を追加SNSが来院判断に影響したかの直接的な確認。最もリアルな効果測定

特に来院時の問診票への項目追加は、SNSの間接効果を可視化する最もシンプルで確実な方法です。「来院のきっかけ」の選択肢に「Instagramを見た」を加え、月ごとにその割合を集計するだけで、SNSが来院判断にどの程度影響しているかが見えてきます。

他施策との予算バランス:SNSの費用配分の考え方

SNSの費用配分は、Web施策全体の中で考える必要があります。
大前提として、HP・MEO・SEOが整備されていないなら、SNSより先にそちらに予算を投下すべきです。

Web施策全体の主力はあくまで直接集患に繋がるHP・MEO・SEO・リスティング広告です。

SNS運用代行に月20万円以上かけるケースでは、「その費用の一部をSEOコンテンツ投資やリスティング広告に回した方が、新患獲得への直結度が高いのでは?」という問いを定期的に立てることが、予算配分の最適化につながります。

SNSを始めるべきタイミングと優先順位の考え方

SNSを始める前に、以下の5つの条件が整っているかを確認することが重要です。

SNS開始前に整えておくべき5つの前提条件

チェック項目内容未整備の場合
① ネット検索からの流入があるかSEO対策が行えているかネット検索からの流入が弱い→SNSより先にSEO対策改善
② GBPが最適化済みか基本情報・写真・投稿・口コミ返信を定期的に行っているかマップ検索での表示が弱い→SNSより先にMEO対策(0円から始められます)
③ 口コミが一定数蓄積されているかGoogleマップの口コミが10件以上あるか口コミとSNSの相乗効果が機能しない→口コミ蓄積を先に
④ 運用リソースが確保できるか週2〜3時間をSNS運用に充てられるスタッフがいるかリソース不足で放置リスクが高い→体制が整うまで見送り
⑤ 運用の目的が正しく設定されているか「信頼構築の後押し」が目的と認識しているか(「新患獲得の主力」と誤認していないか)期待と実態のギャップに苦しむ→目的を正しく設定してから開始

よくある質問(FAQ)

Q1: 保険診療のクリニックにSNSは必要ですか?

A: 予算と運用体制が確保できるなら、やった方がよい施策です。ただし、期待すべき効果は「新患の直接獲得」ではなく、「検索やGoogleマップでクリニックを見つけた患者の信頼感を補強し、来院の背中を押す」役割です。この位置づけを正しく理解した上で取り組むことが、長く続けるための前提になります。

Q2: 保険診療クリニックにはどのSNSがおすすめですか?

A: LINE公式アカウントとInstagramの二本立てを推奨します。LINE公式は既存患者への情報配信・再診リマインドなどリテンション施策として、Instagramは院内の雰囲気や信頼感を伝えるショーケースとして、それぞれ異なる役割を果たします。

Q3: SNSアカウントを放置するとどうなりますか?

A: 特にInstagramでは、最終投稿が数ヶ月前のアカウントは「活動していないクリニック」という印象を与え、信頼感の後押しどころか逆効果になるので注意が必要です。続けられない見通しなら、始めない判断、または体制をしっかりと準備できるまで待つ判断も合理的です。

Q4: SNS運用にどのくらいの費用がかかりますか?

A: 完全内製の場合、金銭コストはLINE有料プラン程度(月5,000〜15,000円)ですが、スタッフの工数(月6〜8時間)が実質コストとして発生します。完全外注の場合は月額10〜30万円程度が相場です。

Q5: SNSの効果はどうやって測ればよいですか?

A: CPA(新患1人あたり獲得コスト)で測ると効果が見えにくいため、プロフィール閲覧数・HPリンクのクリック数・電話タップ数・フォロワー推移・エンゲージメント率を評価指標にします。来院時の問診票に「Instagramを見ましたか?」の項目を追加して間接効果を可視化するのも有効な方法です。

Q6: SNSよりも先にやるべきWeb施策は何ですか?

A: SEO対策(HP整備)とGoogleビジネスプロフィールの最適化(MEO対策)が優先です。SNSはHPに誘導する導線でもあるため、HPが未整備ではSNSの効果が半減します。SEO・MEOの土台が整った段階で、次にInstagramを週1投稿から始める流れが効率的です。

まとめ:SNSは「やるべきか?」ではなく「正しく位置づけられるか?」

本記事では、保険診療クリニックにおけるSNS運用の本当の役割と費用対効果の考え方を解説しました。

SNSは、正しく位置づけて正しい期待値で運用すれば、保険診療クリニックにとっても価値のある施策です。ただし、その価値は「新患が直接増える」という分かりやすい効果ではなく、「患者の安心感を高め、来院の後押しをする」という間接的かつ長期的な効果です。この効果を理解し、無理のない体制で継続できる条件が整っているなら、SNSへの投資は合理的な経営判断と言えます。

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執筆者
濱谷 洸旭
クリニックWeb総合研究所代表/株式会社trendPlus CEO

同志社大学卒。2017年にWeb広告事業にて独立。金融Webメディアを立ち上げ、開設から半年で月間18万PV達成。その後、個人事業から上場プライム企業に至るまで数十社のWeb集客を支援。多くのビッグワードで上位を獲得。2019年に法人化し、株式会社trendPlusを設立。
自身が中小企業診断士の資格を保有しており、専門的なWeb集客の面と総合的な経営面でのサポートができることを強みに持ち、とにかく「結果(成果)」にこだわる支援を行うことを重視している。
2026年に自身のこれまでの知識・経験を活かし、保険診療のクリニック集患に特化した支援サービスである「クリニックWeb総合研究所」を立ち上げる。